キューブの天井のクリアの白ボケをDIYの吹付塗装でつやつやにする

タカラ塗料の大野です。

かわいらしくて中もまあまあ広い日産キューブ(Z12)を嫁さんが乗っているのですが、もうずいぶんくたびれてきました。
運転に自信がない嫁さんは「次に買い替えるのなら小さくて小回りの利く軽だ」というので何となく阻止し続けて数年、天井のクリアがいよいよ白ボケてきました。

天井がクリアボケしたキューブ

車検に通したところなので、「次の車検では買い替えるから天井だけ何とかしろ」との指令を受けたので何とかすることに。
もちろん最初は「艶消しのちょっと似合う色を調色して作って、刷毛とローラーで天井だけ塗りたいな」とか「純正色でもいろんな色がある車やから、それにはないかわいらしい色に全塗装したろうかな」とか考えていました。

しかもこのZ12のキューブの塗装事例は意外と少なく、本サイトに掲載されているのも2025/7時点で3台だけになってます。

Z12キューブの刷毛塗全塗装事例
Z12キューブの刷毛塗全塗装事例
Z12キューブの刷毛塗全塗装事例

どんな色にしようかなぁ、と考えていたのですが、まさかの嫁さんからの指令は
「同じ色でつやつやピカピカにしろ」
でした。
「それは難しい。それが難しいからうちでは刷毛ローラーで簡単にできる商品を作って・・・」
と説明したのですが、我が家では車を塗るのは「簡単」で「すぐにできるもの」と思われているので、それでもやってと譲りません。

まあいいか、どれだけ難しいか久しぶりにやってみてブログに書いて、同じく車塗るのは簡単だと思っているかもしれないうちのスタッフの教材になれば・・と思い、「わかった。夏休みの自由研究的にやるわ」と答えると、
「次の土日でやって」
と鬼の指令。心の準備を急激にすることになりました。

クリアボケをつやつやに塗りなおすプラン

今回のプランはこうです。
1,マスキング
2,600番で足付け
3,缶スプレーで色付け
4,安物のスプレーガンで2液ウレタンクリアの塗装
5,研磨、磨き
考えるだけで億劫になりますが道具をそろえて行っていきます。

クリヤボケの現状の状態

Z12キューブ天井のクリアボケ状態

買った時の日産の営業によると天井の幅はデザイン上、とても広くとられているのでエルグランドと同じ横幅があるらしいです。広い。
そして状態的にはクリア面だけ劣化してて、まだ色の層からの剥離まではいってなさそう。
以前クリア剥がれミニクーパーを塗装したことはあるけど、これはそこまでひどくなさそうです。
表面だけ白ボケしてるという感じです。

以前全塗装したミニクーパーのクリア剝がれ状態
以前塗装したクリア剥がれミニクーパー

そもそもクリアボケって何?クリア剥がれとの違いは?

今回の状態はクリアが白ボケている状態、クリアボケです。
さてミニクーパーであったクリア剥がれとはどう違うのでしょうか?

おそらくほとんどの車で起こっている、白くぼけたような状態はクリアボケだと思います。
塗装の一番表面にあるクリアの層が太陽光線によって劣化して、塗膜の性能がなくなり白く分解が始まっているような状態です。

塗料は太陽光により劣化すると分解が始まりチョーキングといって粉化が始まります。ガードレールを触ったら手が真っ白になるのがそれです。家の外壁の塗装が劣化してもこうなります。
車も同じで表面が劣化し、塗装表面上がざらざらになり光が乱反射して艶が消え、白っぽく見えるのです。

水をかけたりして塗れている状態にすると白っぽさが消えて艶があるように見えたら、クリアだけがぼけたクリアボケ状態です。その上にワックスなどかけて艶をかけたらクリアの白ボケがマシに見えるかというと全然だめで、ワックスだと膜が薄すぎて白ボケが解消しないので、やはりしっかりとクリアを上から塗らないとだめなのです。

クリアボケをツヤツヤにする ステップ1 マスキング

とりあえずはマスキングを開始。
の前に、先日のリペア屋車全塗装大会の時にいらっしゃった元板金塗装職人の方が、この天井の仕切りみたいな部分のパーツは簡単に外せる、ということで外してみました。

Z12キューブの天井のプラスチック部品をはがしたところ すごい砂

すごい汚い。何度も手ぼうきで掃き出しました。

アンテナも外しました。

刷毛とローラーで塗るときの天井塗る前の養生はこれぐらいでいいけど、吹付のときはもっとマスキングする
刷毛とローラーで塗るときの天井塗る前の養生はこれぐらいでいいけど、吹付のときはもっとマスキングする

そしてぐるっと一周マスキング。
いつもの刷毛とローラーで塗る場合はこれぐらいのマスキングでいいのですが、今回は缶スプレーとスプレーガンを使った吹付塗装。もっとしっかりマスキングしていきます。。
この時点でなぜ刷毛とローラーで塗らせてくれないんだ・・・と少し思いました。

アンテナ部分もしっかり隠れるようにマスキング。

吹付塗装の場合はしっかり全体に養生する

車の塗らないところをマスキングするのはもちろん、会社の倉庫で塗るので什器や商品など汚したくないものはすべてマスキング。
たまに住宅街で吹付塗装をされる方がいらっしゃいますが、吹付のミストはどこまで飛んでいくかわかりません。噂では2キロ以上飛ぶという話もあります。市街地での吹付塗装は避けたほうが無難です。

これだけやって余計にわかるのですが、缶スプレー程度の圧の塗装ミストも右側の青い箱部分やDIYって書いた刷毛のほうにもミストはしっかり飛んでました。

クリアボケをツヤツヤにする ステップ2 足付けとパテ埋め

マスキングができたらしっかり足付け。足付けしてたら見つけてしまいました。ちょっとしたへこみが。。

Z12キューブの天井のへこみ

これ僕が天井の上に高圧洗浄機のガンを2Fから落としてしまいへこんでしまったところです。まだ嫁さんにはばれてないので、さらにばれない程度にパテ埋めをすることに。

その部分だけしっかりと足付け。

今回使ったのはポリエステルパテ(通称ポリパテ)です。

主剤(グレー)と硬化剤(黄色)を混ぜるタイプで、しっかりと混ぜ合わせて使うのですが、通常の比率は100:2です。ですので上の写真の割合は硬化剤が多すぎます。こちらのパテは硬化剤を多くすると固まるのが早くなるのでわざと多くしています。

あんまり盛りすぎると研磨が大変なのでほどほどに。

ポリパテを白熱電球で熱して硬化促進する

暑い日でしたが早く乾かすために別サイトの新商品の遮熱断熱塗料の実験のために探して買った白熱電球で温めました。これでかなり早く乾燥。

乾いたら研磨してこれぐらい写真ぐらいまで削りました。実はこれでもまだ甘いんですが時間がないのでこれで良しとする。本当はもう1,2回パテして乾かしたほうがいい。

クリアボケの塗装前の足付け後の状態
ここまできてやっとこれから塗装

パテもしたこともあり、ここまで時間がかかりましたが、この後脱脂をしてやっと塗装開始できます。

クリアボケをツヤツヤにする ステップ3 ラッカースプレーで色付け

今回色を付けるのに使うのはこちら。

塗るのが決まってから慌ててアマゾンで買ったホルツの純正色スプレー。調べたらキューブのビターショコラはL50みたいです。2780円で2本購入しました。
クリアボケだけなのでクリアをかけるだけでいいかな、とも思っていましたが、それだけではちょっと心配だったので色もつけよう考えていました。

めちゃめちゃよく振ってから試しぶき。色もあってそうなのでこれっで全体に軽く吹きました。

ホルツの調色したスプレー ビターショコラL50 クリアが白ボケした天井にうっすく塗ってみた

1本1㎡塗れるっぽいので2本あればいけるやろうと思っていたのですが誤算でした。結構ぼかすように全体に塗ったのに軽く1回目の塗装で1本使い切ってしまうことに。
これは全部ちゃんと色がつくんやろうか。。

怖くなってきたので作戦変更。先ほどパテをしたところが磨き傷が強いのでそのあたりを重点に吹き、あとはなんとなくぼかしてしまうことに。

やっぱりちょっと現状の色とスプレーの色が違うなぁ。。

ホームセンターで売っている補修用スプレーの色がぶれる理由

ちなみにこういう純正色の補修というのは色がぶれやすいのを皆さんご存じでしょうか?
色ぶれやすい要因を知ってるだけ書きます。

1、経年変化で現状の色が変わってる可能性

同じに見えても車の色はどんどん色が褪せて言っている可能性があります。ちなみにこのビターショコラも新車時は「ちょっと紫感(マルーンっぽい)があるな」と思っていたのですが、現在は結構茶色っぽい感じです。
街で走っている同じビターショコラを見ても手入れ状況なのか保管状況なのかちょっと違う色があります。

2、そもそも新車時から違う

新車時でも同じ色名でも違う色になっている場合があります。例えばもともと関西ペイントの塗料で製造していたのが、途中から日本ペイントの塗料に変わった、とかがまれにあるのですが、それによって色が若干変わる、なんてことがるようです。それで年式によって違うのです。

3、缶スプレーで塗装の工程を端折ってる可能性

本当は3コートといって本当の塗り方ではベース色を塗ってからパール系の塗装をし、その上にクリアをかけて完成させる、という塗り方の純正色を、缶スプレーではすべての種類をスプレーにすると種類が増えすぎてしまうので2コート、つまりベース色を端折って塗れるように調整している可能性があります。
その場合ちょっと色が違って見える、なんてことがあるかと。

じつはこのビターショコラも3の可能性があり、よく見たらムラムラになってしまいました。

ホルツの調色したスプレー ビターショコラL50が全部なくなった図 足りない

しかも缶スプレーはあっという間になくなり、もうどうしようもないことに・・・

でもまあ「よく見たら」って感じなので嫁さんは気付かないだろうとクリアの工程に移りました。

クリアボケをツヤツヤにする ステップ4 ウレタンクリアの吹付け塗装

2液ウレタンクリアと硬化剤を混ぜる

クリアを用意して硬化剤を混ぜてよく攪拌して、そのあとシンナーを入れてよく攪拌しました。
シンナーを入れないといけない場合、硬化剤と同時に入れず、硬化剤を先、シンナーは後に入れるようにしましょう。先に硬化剤と反応させてからシンナーの順です。

2液ウレタンのクリアを安物のガンを使って吹付塗装

久々の吹付で緊張しましたが、缶スプレーと違って圧がありますしかなり広面積にぶわーっと吹けます。
安物のガン(1500円ぐらい)なのでちょっと凹凸がでかい気がするけど、ガンガン吹いていきました。

そしてあっという間に完成。

マスキングテープをはがして驚愕しました。残したほかの部分とえげつなく艶が違う。。
これが刷毛とローラーで艶消しに塗ったら、塗ってないところとの差はそんなに目立たないのですが。。

さらにゆず肌も結構あるのが気になります。蛍光灯の光がもやもやってしてると思うのですが、これがゆず肌状態です。もうちょっと希釈したりいいガン使えばよかった。。

翌日は磨き地獄です。

ゆず肌解消と純正状態のクリアをマシにする・・・磨き地獄編の開幕

家に帰って太陽光で見てみると、立った高さよりちょっと高いぐらいでは色ムラはわかりませんが、2階から見ると結構色ムラが見えることに。。まあ2階から見ることないしいいか。。

刷毛とローラーで塗るならこんな色ムラなんて起こらないのに・・・

天井のクリアがゆず肌状態

きれいにツヤツヤに見える天井も近くで見るとこのように凸凹になっています。これがゆず肌の典型例。こいつをペーパーでやすって平らにし、ペーパーでやすると傷がつくのでそれを細かいペーパーで落とし、その磨き傷をさらに細かいコンパウンドで磨き、さらにその上にワックスをかけるという途方もない作業をします。そして今回塗っていないところもコンパウンドで磨き、艶をすこしでもマシにしようと思います。
それが磨き地獄編です。

あっつあつになっていたので軽く水をかけて屋根の下に。狭い。会社でやりたい。

紙やすりが純正塗膜を傷つけては面倒なのでマスキングでカバーします。

当て板をして1000番のペーパーで削っていきます。これがこの日の失敗。手磨きで1000番スタートではらちがあかない。

まずは一か所だけ完成させてみる。思いっきり磨いて凸凹を平らにしていく。

もういいかなと思ったらコンパウンドをかけていく。

部分的にコンパウンドで磨いた後

そうすると鏡面の仕上がりに。
今回変な縛りを持っていて、磨きマシーン(ポリッシャー)を使わず全部手でやろうとしています。途方もない磨き作業が始まります。

※じつはポリッシャーも持っていますが、基本的には一般の方も再現可能なようにできるだけ機械に頼らないようにしています

とにかくゆず肌がなくなるまで手でやすり、コンパウンドを中目→極細とかけていきます。

手でコンパウンドをかけて艶を出す
天井のクリアの磨き後

ある程度まで磨けたらマスキングをはがして塗っていないところもコンパウンドをかけてワックスをかけ、艶を統一させました。それにより出来上がったのはこんな感じです。

ゆず肌の研磨前
まだゆず肌はあるけどそこそこに艶が出た状態

左が磨く前、右が磨き後。空がきれいに映るようになりました。
この凸凹を無くす磨き作業はきれいに吹けてたら必要ないのですけど、素人仕事では必要です。大変。
これなら艶消しをローラーで塗るほうがめちゃめちゃ楽です。。

繰り返されるクリア磨き地獄

後日また2Fから車を見てみると磨き傷が。。
やはり手で磨くと全然足りていないようで、今更また手でコンパウンドをかける気力もないのでAmazonの奥地よりスポンジのバフを取り寄せ、結局ポリッシャーを使うことに。

Amazonで取り寄せたスポンジバフとペーパー これでクリアをポリッシャーで磨く

ペーパーも取り寄せ、ゆず肌をさらにマシにするように研磨。

ペーパーをかけて塗装のゆず肌を削った状態

その後コンパウンドを中目→細目→極細とかけました。

スポンジバフを使いコンパウンドをかけまくる

そして完成(にしました)

クリアボケを塗装して磨いた状態

もうしょうみやりたくない。。

クリアボケを直したコストまとめ

今回かかった時間と費用をまとめます。

作業時間

1日目
全体の養生→車のマスキング→パテ埋め→足付け→塗装
9時~14時 5時間

2日目
マスキング→全体に磨き作業
14時~17時半 3時間半

3日目
天井のみ養生→天井のみ磨き作業
16時~18時半 2時間半

合計11時間

費用

マスキングテープ、養生用品 ありもの 0円
耐水ペーパー ありもの 0円
パテ ありもの 0円
ワックスオフ ありもの 0円
カーペイント MINIMIX オーダーカラー 日産 L50 ビターショコラP 2780円×2
車用クリア 5000円
コンパウンド 1480円
スポンジバフ 1580円
サンディングディスク 1890円

合計 15,510円

となりました。
何度も書きましたが艶消しで、刷毛とローラーで天井を塗ればもっと早く、もっと手軽に、もっと安く仕上がったのに・・・
ちなみに刷毛とローラーで仕上げた場合の金額と時間を考えてみました。

もしクリアボケを刷毛とローラーで艶消しの塗料を塗っちゃう場合のコスト

作業時間

車のマスキング→足付け→塗装
かかっても2時間

費用(全部買ったとして)

マスキングテープ 120円
耐水ペーパー 300円
タカラオリジナルペイントセット 刷毛・ローラー・トレイ 4点セット 1580円
ワックスオフ 1840円
バランサー 0.5L 2500円
水性マットブラック 1kg 6800円

合計 13,140円

クリアボケの天井だけクリアを塗る・・・まとめ

上記のコストまとめを見ると結局時間としては9時間、金額的にも大幅に吹付と刷毛ローラー塗りとでは差が出ました。

クリアボケのが起こりやすい天井やボンネットだけ塗るとなるとコスト的には安くはなるかもしれませんが、うまくいっても天井とボンネットだけがやけにきれいになり悪目立ちしてしまいます。

しかし艶消しの塗料で刷毛ローラーで塗ると、色は純正色とは違いますが、全く質感が違うのでそれはそれで特におかしくはないのだと思います。

ダイハツソニカのボンネットと天井を刷毛とローラーで塗った図

こちらの事例では天井とボンネットをホワイトクレバスという白っぽい色で塗っているのですが、これはこれでおしゃれですよね。

別のお客様でも塗料を買って帰った日にいてもたってもおられず、ボンネットだけその日に刷毛とローラーで塗ってみたら簡単すぎて1時間で塗れてしまった、というお声も聞きました。(後日全部塗装したそうです)

勢いあまって買って帰った日にボンネットだけ塗っちゃったの図

ぜひクリアボケにお困りであれば刷毛とローラーでの塗装をお試しになられてはいかがでしょうか?

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